AA1: アーティスト・トイなど、アーティストがクリエイトする商品の流通が、現在のサブカルチャー・シーンではある種トレンド化しているように映ります。これはいつ頃から、どのように始まったものとお考えですか?
OZ:特筆すべきは、「MEDICOM
TOY」の出現でしょうね。それ以前にも、「ガレージキット」と呼ばれるカンパニーはありましたが、「MEDICOM」はマニア向けの世界だったものを、お洒落な感覚で流通させ、一般の若い人達にも受け入れられ、認知された、最初のメーカーだと思います。デビルロボットなど、グラフィック・デザイナーの中にはトイが好きな人が多いんですが、そういう人達の要望を組み入れながら作ってこられた事が一つ、更にKUBRICKやBEARBRICKといった一つのトイのフォーマットを作成し、様々なアーティストにデザイン/ペイントを施してもらうシリーズ展開を成功させたのが、ブーム(トレンド化)の始まりではないでしょうか。そこへ、「MEDICOM」に触発された香港系マイケル・ラウが出てきて、アーティスト・トイのジャンルが確立されたと思います。
これらのトイは、いわゆる子供向けのおもちゃ屋さんへは流通されない経路、つまりトレンディな人たちが出入りするセレクトショップや、Toy
Shopと言うべきか、ちょっとおしゃれな店へ流れて、広まっていきました。最初から「Mass」を狙うのではなく、まず欲しい物、質のいい物を少量でも作っていこうというストリート的な姿勢がよかったと思います。
ニューヨークでは、1998年頃ですか、うちと「360°TOY」が最初にマイケル・ラウなど香港ストリート系を扱いました。反応はすぐに来ました。口コミで広まり、それから雑誌の取材などを受けるようになり話題になっていったのです。それから、デビルロボットにZAKKAのスペースで個展をして頂いた折、「MEDICOM
TOY」によるトーフ親子のキューブリックがリリースされ、マイケル・ラウのようなストリート系のものと同時に、フォーマットを決めた小さいトイというものがニューヨークでも認知され出しました。これらのトイを何と呼んで普通のトイと差別化を計ろうか考えた末、苦肉の策として、安直ではありますが、「アーティスト・トイ」と呼び方を決め、ECや店頭で露出させていきました。
今ではメーカーもこの呼び方を使っていますし、ニューヨーク・トイ・フェアでもそういうブースが出展されるほど、アメリカでは定着してきた感があります。現在では、トイ以外にもスニーカー、スケートボードとファッション系の世界で広まってきていますし、ストリートだけでなく、企業もいろいろと関係してきていますね。今後も、もう少しこのスタイルは続いていくと思いますが、コマーシャル的な部分が強くなってくると、ちょっと状況が違うので、そういうアーティストは離れていくでしょうね。
AA1: ZAKKAのクリエーターズ・スペースでは、どのようなアーティストの参加を望んでいますか?
OZ:私たちのコンセプト、スタイルを理解して頂ければ、あとはこの場所を使ってこういうことをしたいとか、表現の目的がはっきりしている方なら、作品の様式などは問いません。作品そのものに関して言えば、やはりその人の個性、独自性があるものが望ましいですね。「なぜそうなったのか」という意味は必要だと思いますが、うまくまとまっているだけのものより、作品のパワーが感じられるようなものが見てみたいです。
ニューヨークでは、NIKEやDIESELなどの企業がショップ・スペースを解放したりして、アーティストにとっての活動場所が拡がってきているように思います。運送面など色々リスクもありますが、それ以上に、私たちもこれからもっと日本や海外のアーティストを紹介していきたいので、興味のある方はメールを送って下さい。日本語でもOKですよ。語弊があれば申し訳ないのですが、「こういう表現がしたいけれど、ニューヨークのアート・ギャラリーとは違うかな…」と思っている方、既存のいわゆるARTというものからはみ出しておられる方、大歓迎です。音楽で言えば、インディーズのライブハウスみたいなものかもしれません。ZAKKAを足がかりに、ニューヨークでの次のステップへと飛躍してもらえれば嬉しいです。
AA1: ニューヨークのフリーペーパー「Educated
Community(EC)」で連載されています。デザインに関する洞察や、キレのある語り口のエッセーですが、ここで、Tシャツを初めとして、“non-nonsense”なデザイン製品の出現を望むと書かれていたことがあります。インダストリアルなテイストを好むともおっしゃっていましたが、これについて、もう少し詳しく教えて下さい。
OZ:私は物が書けるタイプじゃないんですよ。でも、ECでは本当に自由に言わせてもらって、感謝しています。ご質問の件ですが、あの時のテーマは「日本の職人について」だったと覚えています。素晴らしい職人の技術が衰退していく、古いものが売れなくなっていくというのは、ある意味仕方がないにしても、せめてそのスピリットはきちんと受け継ぎ新しい物を創っていかなければならない、という事を言いたかったんです。
最近の日本のデザインは、何かToo Muchなものが多いと感じます。「こんな物にこんな機能までついてるの?」という様な過剰な物が多く、子供が喜びそうなかわいいデザインや色が氾濫し、テレビのコマーシャルを見ればアニメ声の女性ばかり…。別にそういう物があってもいいんですが、何かそればっかり目立ってしまっているような気がするんです。「インダストリアル」というのは、そういう装飾やチャラチャラした部分がない、本当の機能美を追求しているということで、そういう物に惹かれるということなんですね。要は、どの部分を一番にもってくるか、だと思います。例えば、掃除機ならホコリをよく吸うとか使い易いとか、そういう機能に重点を置いたものより、いまの日本の物は見た目やネーミングを重視する事が多いんじゃないか…、などと疑ってしまいます。
繰り返しますが、そういう物を否定している訳ではないんです。そういう物ばかりがテレビやメディアに流れ、売れていき、本当にこだわりのあるいい物を作っている人の商品が売れずになくなっていくという現象こそを、否定したかったのです。生産者のみでなく、これは消費者一人一人の意識/認識の問題であり、流行っているからとか、雑誌・メディアがいいと言っていたからというのではなく、そこから自分で考え、選択していく事が大事だと私は思います。その上で、こういう物が流行るのなら、仕方がないのかもしれませんが…。アメリカは合理主義だと思いますが、エアコンなどはいまだに古いデザインで、機能も本当に「冷やす」だけ。でも、安価でよく冷えれば、それでいいんじゃないかと思うんですよね。日本は、そういう選択ができ難い状況になっているし、素晴らしい日本文化、職人をなくすということは、素晴らしい建築などを失うのと同様に、本当に悔しい気持ちになります。
AA1: 現在の日本及び世界のデザイン事情をどのように見てらっしゃいますか?
OZ:専門家ではないのではっきりしたことは言えません。しかし、何かを伝えるという時に、一番伝えたいものをきちんと表現できているものが好きです。例えば、飲料水の宣伝なのに、女性の裸に近い映像を使ったり、そういう人の注意を引きつける方法が安易なものには、失笑してしまいます。何度もいいますが、そういうものに引っかかってしまう消費者の側も、罪は重いと思いますよ。デザイナーというのは、クライアントを満足させたり、商品が売れる事を第一に考えなければならないのかもしれませんが、そういう安易な方法じゃなくとも、素晴らしいデザインは人々を感動させ、消費にも結びつくと思いますが、どうでしょう? そんな、きれいごとばかりじゃないことはよくわかります。しかし、現在の日本やアジアの(デザインなどの)方が、手段を選ばないというか、安易に映ってしまうように感じます。本質をうまく表現し、人々に感動と共に(メッセージなどを)「伝える」という才能を持っている人というのが、デザイナーであり、アーティストだと思うんです。そういう人、もの(デザインなど)が増える事を、心から望みます。
AA1: 9-11以前と以後では、ニューヨークの街の雰囲気、人々の意識、カルチャーやアート、ストリート・シーンに、何か変化が起きたと思われますか?
OZ:9-11をきっかけにというよりは、街は経済や出来事、9-11もその一つですが、それら様々な事象によって、常に変化していますし、その影響というのは皆それぞれに受けていますよね。私が感じた事は、アメリカという国は、常に戦争などに直面している国なんだな、ということです。恒常的にそういう事に対峙しているので、国民がきちんと意見を述べる、というのを実感します。対して日本には、無干渉による平和がある。どちらがいいという事は別にして、日本とは違うなあと思います。
AA1: 最後に、今後のプロジェクトの予定や、新企画のことを教えて下さい。
OZ:いろいろとアイデアは持っています。ZAKKAらしいと言いますか、そういう活動を通じ、ニューヨーク・シーンの一つとして何か残せるように、アーティストの方達と一緒に頑張りたいです。具体的な今後の予定で言えば、ショップ内のショウはもう何件か決定していて、トイ・デザインやファッション系のショウ、もちろんグラフィック・デザインも含め、バラエティーに富んだラインナップが控えているんですよ。
来年は、店外での企画展イベントのお話も頂いています。詳細は未定ですが、「オタク」というキーワードを用い、日本のアーティストの方々にもご協力頂いて何かしたいと考えています。
最初にお話しましたように、私自身、第1オタク世代だと思いますし、ZAKKAのスタイルもそこに原点がある、そういうものに影響を受けてきたように思うんです。ただ、ここになって「オタク」という意味もすごく曖昧になり、限定できなくなってきました。戦後、外国文化が入ってきた頃、少なからずそういうものに影響を受けてきた人たちがクリエイトしてきたオタク文化というものを気に留めるのは、とりあえず2005年一杯で区切りをつけてよい気がします。今までのオタク文化のまとめは、村上隆さんが「リトルボーイ展」でも示されたと思いますが、ZAKKAでは、日本文化に少しでも興味があるという、日本以外のアーティストに、日本のオタク文化と聞いて感じることを表現してもらい、日本のアーティストと対峙したものを見てみたい、そう考えているところなんですよ。
いま、日本は政治、外交や文化も含め、考え方や価値観などが変わっていく岐路に立っているような気がします。そういう意味でも、これからの日本のアーティストの活躍を期待したいです。海外に出て来てもらって、いろいろ見て、体験してほしいと思います。
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