

村上隆キュレーションによる「リトルボーイ:爆発する日本のサブカルチャー・アート」展が、ニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで4月8日から7月24日まで開かれた。会期中は、ニューヨーク市内の公共スペースや交通機関で日本人アーティストの作品のインスタレーションが行われたほか、各種関連イベントも開催され、話題を呼んだ。
本展は、ロサンゼルス現代美術館分館での「Superflat」、パリ・カルティエ財団での「ぬりえ」展に続く“Superflat”3部作を締めくくるもの。“Superflat”は、新しい波をつくりだす日本人アーティストの作品を海外の人々に紹介し、その結果生まれた現代日本美術の視覚的・美的背景に注視するというコンセプトで展開してきた。最後を飾る「リトルボーイ」展では、黙示録的SF、ビデオゲーム、マンガ、アニメなど急速に全世界に広がっている日本のおたく現象を検証。そのために村上が選んだ「作品」は、過去30年に放送されたテレビアニメやアニメ映画(ギャラリー内で上映)、庵野秀明の原画600点、北原コレクションからのヴィンテージ・トイ320点、ドラえもん、ゴジラ、ハローキティなどのグッズを含むおよそ1500点に及んだ。
タイトルの「リトルボーイ」は、1945年広島に落とされた原爆のコードネームを指す。村上は、被爆という国民的経験がいかにグラフィック系サブカルチャーを「ポスト核の崇高」といわれるものへと駆り立てたのかを問いかけ、核戦争のトラウマ、敗戦の惨害、また村上自身が言うところの「よりどころのない、政治に無関心な国家」に対処するために、アーティスト達がどのようにマンガやアニメを用いてきたのかという点を探った。さらに、おたく文化を特徴づける歴史上の出来事・過程として、村上は軍事戦略と太平洋戦争での敗戦、米国への軍事的・政治的依存、伝統的・階層的な日本文化から子供・青少年向け消費社会への移行などをあげ、ここから過去30年の日本のポップカルチャー、グラフィックアートについての解釈を試みた。
ポップカルチャー、サブカルチャーの象徴的なイメージと並行して館内を彩ったのが、「かわいい」文化や「アニメ」文化に色濃く影響を受けながら作品発表を続ける、現代日本を代表するアーティストたちの作品。奈良美智、ヤノベケンジ、椿昇の作品のほか、村上も自作「タイムボカン」を展示した。
同ギャラリー館長のアレクサンドラ・モンロー氏は、「村上がこれほどの影響力をもち、論争の的になるのは、日本のおたくサブカルチャー、及びそれに関連しておきた現代美術のネオポップ運動の背景にある文化・政治的動向を反映する彼の立場によります。『リトルボーイ』展では、村上を美術館という場に招き、現在の日本についての自らの考えを提示してもらいます。これは学究的な学芸員が文化的論点を形成するという通常の形態を覆すものであり、ここでは村上の日本人の心理の内側から自身の視点を提示するのです」と論じている。
今展は、日本と東アジアの芸術文化に関する研究、認識の向上に長年貢献するジャパン・ソサエティーと、ニューヨークの公共スペースでのアーティストの企画や作品製作、展示の発表を続けるパブリックアート・ファンドとのコラボレーションにより実現した。村上が主論文主筆、図版解説の編集を務める展覧会図録はジャパン・ソサエティーとイェール大学出版局との共同出版により配本される。
