
Gary BASEMAN: Pervasive Artist プロフィール
LAウェスト・ハリウッドの高級住宅地。エンターテインメント業界における成功者たちが居を構える一角に、アメリカで一番人気のアーティストが住居兼スタジオを構えている。
その名はゲイリー・ベイスマン。
「New Yorker」「Time」「Rolling Stone」「GQ」「Forbes」「Esquire」「The
New York Times」など、メジャー誌から引っ張りだこのイラストレーターであり、コマーシャルでコラボレートした企業は「NIKE」「Mercedes-Benz」「Capitol
Record」「Gatorade」ほかビッグネームが勢ぞろい。NY、LAを中心に国内外で個展を開き、ローマ現代美術館及びナショナル・ポートレート・ギャラリー(ワシントンDC)には作品が永久コレクションに加えられるなど、絶好調ばりばりのファイン・アーティストでもある。
それだけじゃない。アメリカで最も売れているボード・ゲーム「Crunium」のコンセプト・アートを担当し、トイ・デザイナーとして世に送り出す限定版トイは片っ端から売れていく。エグゼクティブ・プロデューサーとして製作指揮をとった自作のテレビ・アニメシリーズ「Teacher’s
Pet」(写真右参照)は3年連続のエミー賞に輝き、ディズニー配給で映画化され話題をさらった。
ほかにも「Zippo」ライターのライン・デザインや絵本制作など、依頼は次から次へと舞い込み、「いま20以上のプロジェクトを同時に進行させてるよ」という超売れっ子ぶりである。にも関わらず、各メディア取材に快く応じ、サービス精神一杯にアート論に花を咲かせる。サイン会ではファン一人一人と細やかなコミュニケーションをとり、スケジュールが1〜2時間長引く事はしょっちゅうだ。更には、全米中のアートスクールなどでレクチャーを精力的に行い、後進の育成と業界の活性化に貢献している。
このエネルギー、このパッション。絵を描く事が大好きだったゲイリー少年は、成長するに従い、アートへの迸る情熱を忘れるどころか増大させ、一流アーティストになりますますエネルギッシュに、あらゆるメディアで縦横無尽に創作の羽を広げている。「Pervasive
Artist」(註1)と自称するが、その多作さ、活動範囲の広さにおいて同時代のアーティストを凌駕する彼を、これほど的確に表す言葉はほかにないだろう。
昨年春、初めての総合画集「Dumb Luck The Art of Gary Baseman」(Chronicle
Books)を出版した。これまでに制作したペインティングとイラストレーション、テレビアニメとアイデア・スケッチ、広告の仕事とプライベート・コレクションである古い時代の写真を並列させ、ゲイリー・ベイスマンの世界がどっぷり多角的に堪能できるようになっている。「このアートブックで、ハイアート(高尚芸術)とコマーシャル・アートの境界線を曖昧にしたかった」と自ら解説するように、アート業界にこびりつく、無駄な階級意識や境界意識を小気味良く一蹴しているのが、Pervasive
Artist、即ちベイスマンであり、同書は正に本人にとって面目躍如の一冊に仕上がったといえる。
素顔は気さくで謙虚な人柄。彼を慕う人間は、ファンは勿論、業界内にも少なくない。プロフィールに自ら「Humorist」(ひょうきん者)と書くように、人を楽しませるのが巧く、レクチャーでも笑いに包まれないものはないという。しかし、自身のアートに話が及ぶと見解はとてもシビアになり、高みへ昇り詰めようとする貪欲さを赤裸々にする。
「これまで手掛けた仕事のうち10%は最高に素晴らしい出来。20%はすごくいい。残りはもう最悪。とにかく、いい作品をつくり続けること、そしてそのいい作品に自分自身が驚かされたい。これが僕の達成すべき目標であり、幸せでもあるんだよね」
作品づくりに対する強固な信念、真摯な努力に裏打ちされた大きな自信。生めば生むほど膨らむ作品=アートへの情熱。経済的にも人気面でも「成功」を手に入れたアーティストの辞書の中に、「休む」という2文字はない。「仕事を辞める時は、死ぬ時だよ」と微笑みながら、「やっと序奏に入ったばかり。これからがベイスマン・アートの始まりなんだ」と前を向いた。 (インタビューは次頁から)⇒
Interviewed by Yumiko Loose
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