acuna-hansen gallery
Owner/Director: Blair Sands Hansen & Chris Acuna-Hansen

チャイナタウン・アートシーンを盛り上げてきたパイオニア的存在のアクナ−ハンセン・ギャラリー。次代の美術界を担う若手アーティストを輩出し、今年でオープン5年を迎える。常にアーティストを親身にサポートして、アーティスト側から絶大な信頼を受ける、ギャラリー・オーナー/ディレクターのブレア・ハンセンさんとクリス・ハンセンに話を聞いた。

チャイナタウンにギャラリーを開いた理由を教えて下さい。
Chris Acuna-Hansen (以下CAH):元々、私もブレアもカンザスシティ(ミズーリ州)のパブリック・アート・プログラムに参加していました。その後、私は美術大学のギャラリーに勤めたんです。二人でLAにギャラリーを開こうと決めてから、私だけ先に現地で場所探しを始め、見つけたのがチャイナタウンの物件。レントが安く、これなら初めの1〜2年はアート作品の売上げを心配しなくてもいいと思いました。
  「アクナ−ハンセン」が事実上、チャイナタウンに最初にオープンしたコマーシャル・ギャラリーとなったわけですが、私が物件を探している当時はメアリー・ゴールドマンも物色中で、ブラック・ドラゴン・ギャラリーやチャイナ・アート・オブジェクトもオープンの準備をしていました。それで私もチャイナタウンの可能性に賭けてみようと思ったんです。
Blair Sands Hansen(以下BSH):クリスは最初、ここにカウチ一つで暮らしていました。私が訪ねて来た時は、トイレしかないからホテルに行ってシャワーを浴びて、またここに帰って来るというパターン(笑)。ある日、作品を見にバイヤーが訪ねて来たことがあるんですが、朝の10時ぐらいにドアをどんどんノックする音がして。でもうちは12時オープンだから、二人ともまだパジャマ姿(笑)。バイヤーは当然、プロフェッショナルなギャラリーを期待して、時間前だろうが作品を見せてもらえると思ってたでしょうが、私達にしてみれば、ギャラリー・ビジネスを始めたばかりだったから(笑)。こんな風に、二人ともコマーシャル・ギャラリーの運営は初体験で、何もかもが初めてづくし。ここまでになるには時間がかかりました。
CAH:ブレアもカンザスシティを引き上げてここに住むようになると、ギャラリーというよりは、クラブ・ハウスのような趣になりましたね。カウチ1つに机、ファイル。ライターやキュレイターたちが頻繁に出入りして、寧ろアーティストやショウの情報を仕入れることに熱心でした。
  今でこそ、1年半先までプランが決まっていたり、計画的に動いていますが、当初は、この次のショウはどうしようか、じゃあ誰か探してその作品を紹介しようと、気の合う人々と一緒に働きながら始まったという感じなんです。


ギャラリーを運営する上で、経費はどう使っていますか?

BSH:私達にはアーティストとしてのバックグラウンドがありますから、自分達で出来ることはなるべく自分達で賄おうという考えがあります。フレーミング(作品を額に入れること、額の作成など)もほとんどクリスが手掛けるんですよ。アーティストが作品を作って、フレーム(額)に入れてとなると、作品を借りる際、作品代とフレーム代がそれぞれ別々に請求されるんですが、うちはフレーム代を削減できるわけです。
CAH:ブレアは美術史も専攻していて、美術館で働いていた経験もある。最初のショウを手掛けた際に、作品搬入にどれだけのコストが掛かるかなど、いろいろアレンジしてくれて、彼女のお陰で滞りなく進められました。
BSH:人生、ホントに何が起きるかわかりませんよね(笑)。これまでの経験が、上手い具合に今の場所で生かせて、ちゃんと役に立っている。ギャラリーを始めたことで、毎日何かしら新しいことを学びながら過ごしています。

チャイナタウンのギャラリーの特徴はどんなところにあるでしょうか?  LAの他のギャラリーに比べ、活気があるように思います。
CAH:例えば、メアリー・ゴールドマンはコンセプシュアル、チャイナ・アート・オブジェクトはハイ・エンドな作品を紹介し、ブラック・ドラゴンは若いヒップスターを集めているという具合に、それぞれが特色を持ち、競い合うのとはまた違う、お互いに切磋琢磨しているという、いい状況にあると思います。純朴だと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、各々のギャラリーはアートを信じ、アーティストを信じている。自分達が展示する作品に自身を持っている。
  チャイナタウンには吸引力があります。特に、若い新進アーティストを吸い寄せる魅力がある。ギャラリーがオープンし始めたタイミングも良かったんでしょう。私達がギャラリーを開いて最初のオープニングをした時、1500人から2000人の人が集まったんですよ。
BSH:チャイナタウンのオープニング・ナイトはそれこそワールド・ワイド! 人種の坩堝である“これぞLA”という感じで、本当にいろんな人が集まるんです。
CAH:コレクターだけじゃありません。大学院生や教授、スケーター、ドラッグクイーン…、一種のクロス・カルチャー現象を体験することができますよ。最先端のカルチャーを楽しみたい人々がどんどん集まるようになった。私達も、オープニングでは無料でビールを配って貢献してますしね(笑)。
ビールはいいですね!
BSH:当初は治安の面など、チャイナタウンに来ることに二の足を踏む人が多かったんです。でもコレクターが頻繁に訪れるようになり、今では20以上のギャラリーが軒並みそろえるので、考え方が変わってきました。チャイナタウンの住人たちも、ギャラリー関係者に好意的ですよ。

CAH:レストランは喜んでくれてますね。ギャラリーに来た人たちは帰りに食事したり、ショッピングしたり、街にお金が落ちるようになったのは確かです。以前から行われていた、市のB.I.D.(Business Improvement District)プロジェクトも相乗効果を発揮してると思います。
アートを通して、コミュニティが繋がろうとしている…。
BSH:人の人生は、単純でなく様々な要素を孕んで出来上がっていくものですよね。チャイナタウンは、ギャラリーだけでなく、新しい人々や味覚に出会える場所でもある。だから私達はここで働くのが好きなんです。お気に入りのレストランもマーケットもある。ユニークな環境に自然に溶け込んでゆけるんですよ。

アーティストとは、どのように関係を築き上げていくのでしょうか?
BSH:アーティストとはオープンな間柄でいこうと決めています。アーティストにいくら払うか、フレーミングや作品搬入などショウの企画にかかる費用、コレクターの情報など、完全にすべての情報を公開しているんです。いかにしてお互いを助け合えるか、真剣に考えている結果なんですよ。ギャラリーがアーティストを支配するという力関係は全く存在せず、常にイコール。親子のような関係を結んでいると言えます。
CAH:これは、LAという土地柄もありますね。LAのアート・シーンは成長途中で、NYに比べてギャラリー数も少なければ、アート・シーンにかけられる予算も多額ではない。逆に、だからこそアートに携わる人々がもっと協力し合える土壌がある。特にチャイナタウンのアート・シーンは、若いアーティストにはいい環境だと思います。
  私達のギャラリーは、専らLAローカルの若手新進アーティストを紹介しています。勿論、長い付き合いの中で、今ではキャリアを持ったアーティストに成長している人も少なくありません。私達はディーラーではなく、あくまでもギャラリストだという自覚がありますから、アーティストをプロモートすること、彼らのキャリアを大切にすることを第一にしています。
  現在展示中(取材時)のカーリー・フェルナンデスのショウをうちでやるのは今回で3回目です。彼女の作品はコンセプトも斬新、テクニックの面でも最高です。ドローイングも、とても完成度が高い。カーリーはいつも、今度はどんな内容のショウを仕掛けたいかアイデアいっぱいに語ってくれるんですが、僕たちは煙に巻かれっぱなしなんですよね(笑)。そこにお互い惹かれ合っている感じなんですが、一人のアーティストと長く関わることで、作品スタイルの変遷や、作家としての成長振りを眺めることができる。気の長い話ですが、時間をかけて対話を続けていくことこそ大切で、私達が打ち込んでいることなんです。
BSH:最初の彼女のショウの時に売れたのはたった1点だけでしたが、それでも「Art in America」(米有名美術雑誌)に素晴らしいレビューが載り、私達には大成功、ハッピーな結果だったと言えるんです。
CAH:自分達が信じるものを展示していこう、お互いに信頼し心から協力し合えるアーティストを選ぶようにしようと、いつも原点に立ち返るようにしています。そうすれば、おのずと結果は現れます。一緒にディナーを楽しめる人としか働かないようにするのがコツです(笑)。
BSH:だって、本当に長い付き合いになるんですよ。もしかしたら一生のお付き合いになるかもしれない。食事ができる/できないは、大切な要素ね(笑)。
  私達は彼らの作品を“編集”しません。彼らのアイデアそのままを生かします。仮にアーティストが、今後作品の方向性をガラッと変えてチャレンジしたいと言ったら、サポートしますよ。なぜなら、彼らのアイデアを信じているし、人としても信頼している。アーティスト自身も自分の創作力を信じ、私たちを信頼してくれている。売れる作品にする為に「小さいサイズのドローイングを描くべきよ」とか、アーティストをコントロールしたり、その作品を編集するなんてことは一切言ったことがありませんし、考えたこともないですね。
ここまでアーティストを大切に考えてくれるギャラリーは、滅多にないように思えますが。
BSH:誰も貧乏したくはないですからね(笑)。

若手アーティストの(作品の)傾向を教えて下さい。
CAH:昔に比べて、トレンドの移り変わりが激しいですね。最近は、とにかくドローイングが多いということ。これはLAやウィリアムズバーグ(NY・ブルックリン地区)に見られる顕著な傾向です。ドローイングなら材料費がああまりかからないという理由も一つに挙げられると思います。
  クオリティとして、ナイーブな、高校生のような感覚を見せている。内容もストレートで、TVの「リアリティ・ショウ」の影響もあるかもしれませんが、リアリティを描写したものが多い。コンセプシュアル・アートから遠ざかり、もっとエモ−ショナルな面をシンプルなアプローチで表現しているように思います。

近々アートフェアに参加される予定はありますか?
CAH:丁度、マイアミ・アートフェア(12月初旬開催)に出ないことを決めたばかりなんです。普段は、年に2つ3つ、アートフェアを選んで参加するんですが。最近は1年中、本当に多くのアートフェアが催され、もうクレイジーですよ。アーモリ−・ショウ、マイアミ、シカゴ、LAでも始まったし、ポートランドも、ロンドンもある。去年のマイアミはまるで“スワップミート”のようで大変だったんです。最初の年は素晴らしかったんですよ。いろいろなキュレイターとじっくり座って話し込み、アートやアーティストについて会話をシェアできた。
  ところがもう、去年は参加ギャラリー数もアーティストもキュレイターも多く、見るものも多過ぎて大混乱。私達のブースにも人が出たり入ったりの繰り返し。(作品の)値段交渉だけ交わすというもので、アートやショウについて語り合いなどできるような状況ではなかったんです。それで、年内は少し様子を見ようということにしたんです。
  どちらかと言うと、アートフェア自体、ディーラー市場のようになってしまっている傾向が否めないかもしれません。皆、売ることに熱心になっている。買い手の勢いもすごいです。例えば、村上隆の作品で、当初200ドルの値がついていたものが、オークションでは20000ドルに釣り上がっているという現象は、昨今のストック・マーケットですらあり得ないような状況だと思います。

海外のアーティストには興味がありますか?
CAH:残念ながら、海外のアーティストは取り上げていないんですよ。私達も最近は、若手だけでなく中堅どころや、NYなどLA以外からアーティストを招聘する機会も徐々に増えてはいます。しかし、やはりLAローカルのアーティストを中心に紹介していく姿勢は変えたくないんですね。
  昔は、LAにはあまりアートシーンがなかったせいもあり、アーティストも道を切り拓くことが出来ませんでした。だから作品をよそで見せるしかなかった。私達がLAベースのコレクターと知り合ったのも、どこかよそでなんですよ。ところがどんどん、LAアートシーンが盛り上がってきた。LAでショウを仕掛けた事のないキュレイターの多くが、是非うちでショーをしたいと言ってくれています。一般的にも、コンテンポラリー・アート・シーンといえばNY、そしてLA、という意識が定着してきました。
  ただ、日本だアメリカだという事にこだわらず、ギャラリー同士ネットワークを拡大して、今アート・シーンで何が起こっているか情報交換する点については、私達はオープンです。また、一緒に仕事をしたいと思うようなビジュアルイメージを送ってくれるアーティストとの出会いを常に待っていますから、基本的にどんなバックグラウンドの人でもウェルカム。ただ、海外の作家となると、シッピングのコストも高く、税関の問題があるので、暫くは、やはり国内の作家に絞る予定ですね。

今後、アメリカでのアート・シーンはどのようになっていくでしょうか?
CAH:今のアメリカは非常にコンサバティブ(保守的)です。ブッシュ政権もあと4年も続くことになりましたしね(笑)。しかし保守政治の時代こそ、この国ではアートが力を発揮する。いい例がレーガン時代ですよ。最悪の政権でしたが、あの頃(70〜80年代)に生まれたアートは活気に満ち満ち、さまざまなコンテンポラリー・アートのスタイルが生まれ、政治に対する一種の文化的戦いを挑んでいた。政府が芸術になぞ目もくれない時期こそ、新しくて面白いアートが生まれる、そう信じたいですね。それにいつの時代でも、人は自分の信じるものを守るために戦うし、どんな状況下にあっても立ち上がるものですから。

(2004年11月に取材)

Interviewed by Yumiko Loose

 
 

 


4.21..05.Update

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オーナーのクリスさんとブレアさん


ギャラリー内観


オーナーのブレアさん


オーナーのクリスさん


オーナーのクリスさんとブレアさん

カーリー・フェルナンデス展会場

カーリー・フェルナンデス展会場


カーリー・フェルナンデス展会場

ギャラリー外観

acuna-hansen
427 Bernard street
Los Angeles, CA 90012
323.441.1624

PHOTO
1.7.05.Update

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