そのMichikoさんの作品だが、趣味の絵画キットとして50年代のアメリカで開発された「ペイント・バイ・ナンバー」スタイルをアダプトしている。繊細な線で描写されているのは、自身の子供時代の写真にモチーフを得た、七五三の着物を着た少女のイメージ(「Girl
in Kimono」)と、人形を乗せた乳母車を押す幼女のイメージ(「Girl in Training」)。青い輪郭線に隔てられた色のあるべき箇所は空白で、そこに緻密なまでに“塗られるべき色”の番号が振り分けられている。
ぬり絵には好きな色を塗るという自由があるが、Michikoさんの「ペイント・バイ・ナンバー」にそれはない。厳密な番号の振り分けにより、視覚認識としての色には予めルールが施されている。ところが、見る者の育った環境や文化的バックグラウンド、年齢、性別などの違いにより当然の結果として、“色”は変幻自在にズレてゆく。色そのもの、つまりヒトの視覚認識そのものは普遍だが、それらを構成する情報はパーソナルなコンテクストに支配されていくからだ。
カリグラフィックなペインティングは平面性を強調するが、全体を覆う線画と番号は、慎重に選択された主題を巧みにイメージの中へと埋没させる。ここに恍惚にも似た視覚の混乱が生じ、見る者はMichikoさんの機知に富んだ「認識ゲーム」に吸い寄せられていくことになる。我々が共有していると幻想する、事前に刷り込まれた社会認識とは何なのか、その認識に対するヒトの記憶や脳のメカニズムとは――。認識の曖昧さを幾層にも重ねて問いかけながら、Michikoさんのペインティングは、“視覚”に、ただひたすら美しい。
現在Michikoさんは、期待されるアメリカのペインター41人の一人に選ばれ、「New American
Painting」(Issue #55 -2004 Pacific Coast Competition. Juried
by Michael Klein)誌上を飾っている。ART as 1は、今後その活躍から目が離せないであろう彼女のロングインタビューはこちらから。 |
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